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小話⑨ 村の仕組み

Author: 三木猫
last update Last Updated: 2025-11-23 11:11:06

「鈴ー?鈴どこー?」

「鈴ちゃーん?」

棗と葵が美鈴を探して、トウモロコシの畑を歩いている。

背が高いトウモロコシは小さい三人を隠してしまっていた。

この畑は、祖父さんと祖母ちゃんの畑で。屋敷の後ろには壮大な畑があったと言う事を知った時は葵と棗三人で目を点にして驚いたものだ。

「鈴ー?」

「鈴ちゃーん?」

相変わらず美鈴を呼ぶ声が響く。俺は少し高い位置から畑を見下ろしているから、三つの金色が何処へ動くかが分かっている。

が、敢えて言わないでおいた。今三人は本当に楽しそうだから。

美鈴が双子に気付かれないようにこっそりと近づいている。そして…。

「呼んだっ!?」

バッと唐突に現れて、

「うわっ!?」

「わっ!?」

突然現れた美鈴に双子が素直に驚いた。

微笑ましい。

「もうっ、鈴は悪戯っ子だね」

「悪い子はこうだっ」

ぼふっと美鈴を後ろから抱っこして、葵はくるくると回転した。

「きゃーっ」

楽しそうにじゃれあう三人。平和だよなぁ…。

どんなにじゃれあっても、土の上だし怪我もしない。ある意味こんな良い遊び場ないよな。

「どうした?鴇。何を見ておる?」

背後から祖父さんの声が聞こえて、俺は振り向かずに祖父さんが隣に立つのを待った。

横に立ち、共に三人の遊び姿を見ると、ほっほっほとやはり微笑まし気に笑う。

「葵に棗に美鈴か。楽しそうじゃのぅ」

「混ざってくるか?祖父さん」

「それも楽しそうじゃが、今はお前さんと話そうかの」

ほれ、座れと言いながら自分がさっさと草の斜面に腰をおろす。俺も特に抵抗がある訳じゃないから、隣へ腰をおろす。

「鴇。お前は長男だからな。母親の実家の村の事は知っておくべきじゃろう」

「祖父さん?」

祖父さんは唐突に作務衣の袖から一枚の紙を取り出した。小さく折り畳まれているそれはどうやら地図のようだった。開かれるとそれなりの大きさになる。

これは確かに地図だが…この村の地図なのか。

「この村の住人は基本的に少ない。何故ならほとんどが親族だからじゃ」

「親族…」

「うむ。佐藤、伊藤、工藤、後藤、武藤の五家がおる」

全部藤がついてるな。何か意味が…?

「因みに全部に藤がついているのは偶然じゃ」

偶然かよっ。若干期待した自分が馬鹿みたいじゃないか。しかし、五家って割には世帯数は多いよな?
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